「財産なんて無いから」って本当ですか? 預貯金口座、土地・建物、株式、ゴルフ会員権、電話加入権、墓、自動車などなど。 あなたも何かひとつくらいは必ずお持ちのはず。
遺言が絶対に必要だとは思いません。
しかし、数々の相続手続をお手伝いしてきた経験から得た結論。相続手続を最も簡潔に行う方法、それが「遺言」です。 相続手続には技術的な要素がありますから、相続人にとっては遺言があるに越したことはありません。
「エンディングノートを書く」それはそれで素晴らしいことです。ですが、法的拘束力があるのは遺言だけです。 せっかく自分の意思を明確にしておいたのに、実現されなければ哀しいですよね。更に、遺言の書き方には決まりがあって、自分勝手に書いたのでは法律的に無効になってしまう可能性もあります。
ぜひ専門家に相談されることをお勧めします。
絶対に必要というわけではありません。
相続争いにならないか心配だとか、そもそも親族間の仲が悪いとか、特定の人に特定の財産を承継して欲しいなど、何かしら自分の意思表示をしておきたい方には、遺言が極めて有効な手段だと思います。
例えば、次のような場合には遺言を作成しておくことをお勧めします。
(1)相続人の中に財産を分けたくない者がいる。
(2)相続人以外のお世話になった方に財産を分けたい。遺贈したい。
(3)先妻との間の子がいる。
(4)子がいないから、妻と兄弟姉妹が相続人になる。
(1)(2)では、自分の意思の実現のために有効です。 (3)(4)では、一般的にモメル要素があるので、トラブル回避のためでもあります。
具体的には、 (1)では、その者の承継する割合をゼロにする(相続分の指定)、若しくは、具体的に個々の財産をその者以外の相続人が承継するように決める(遺産分割方法の指定)。但し、その者に遺留分がある場合は、結果的にいくらかの財産を承継できる可能性があります。 又、その者に相続人としてふさわしくない行為があった場合は、家庭裁判所に対して、その者の相続権を失わせる旨の請求ができます。 (相続人の廃除)
(2)では、具体的に、「誰々(お世話になった人)に、何々(分けたい財産)を遺贈する」と書きます。
(3)では、「相続分が多い少ない」とか「誰が何を承継するしない」とかでモメルことが考えられますので、相続分や遺産分割方法を指定するのがいいでしょう。
(4)では、兄弟姉妹の生活に支障がなければ、「妻が全財産を相続する」とするのも一案です。兄弟姉妹には遺留分がありませんので、これなら確実です。
各人が納得のいくように、簡単な理由を書いておくのもオススメです。
遺言があれば、遺産分割協議をしなくても名義変更などの手続きができます。 又、遺産分割協議は相続人全員でしなければなりませんが、遺言によれば、誰かひとりででも名義変更などの手続きが行えます。 ということは、相続人にとっては、煩雑な相続手続の中で、かなりの負担が軽減される、ということになります。
どっちでも構いません。ただ、法律用語としては「いごん」です。
満15歳以上ならばできます。それ未満の人がしても遺言そのものが無効になります。 又、認知症の方などは条件付きで有効になります。(詳しくはこちらをご覧下さい) ちなみに、本人の最終意思の尊重という立場から、他の人が本人に代わって遺言をすることはできません。 又、例えば夫婦が一緒の書面でする、共同遺言も許されません。
配偶者は常に相続人になります。 配偶者とならんで、第一順位として子、第二順位として直系尊属、 第三順位として兄弟姉妹が相続人になります。 (相続人について詳しくはこちらをご覧下さい) その中でも、相続欠格に当たる人は相続人になれませんし、 相続放棄をした人ははじめから相続人ではなかったことになります。 又、遺言で廃除の意思表示をすることによって、特定の相続人の相続権を失わせる旨の請求もできます。 ちなみに、相続する人を相続人というのに対して、相続される人(亡くなった人)は被相続人といいます。 又、被相続人で遺言をした人を遺言者といいます。
遺言でしかできない事として、相続分や遺産分割方法の指定、遺言執行者の指定、遺贈などがあります。 又、生前にもできるし、遺言でもできることとして、相続人の廃除、認知などがあります。
借金(債務)は法定相続分に従って承継されます。 債権者側からは相続分の指定などは分かりませんから、どの相続人にいくらまで請求できるかは、法定相続分の方が都合がいいのです。 ということは、債権者に納得してもらえれば、遺産分割協議によって特定の相続人が承継することも可能です。
遺言書の方式は法律で決まっていて、その形式に合っていないと遺言そのものが無効になってしまいます。
遺言の方式は、大きく分けて普通方式と特別方式があります。
普通方式には自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あります。 特別方式には危急時遺言と隔絶地遺言があり、更に各々が2種類に分かれて計4種類あります。 合計で7種類ありますが、その中でも自筆証書遺言と公正証書遺言が一般的でしょう。
自筆証書遺言とは、遺言者が全文、日付、氏名を自分で書いて、 押印するだけという、一番簡単で費用もかからない方法です。 但し、ワープロ等では無効ですし、代筆も無効です。 日付は、その人の年齢や能力などの判断基準となるため(詳細はこちらをご覧下さい)、年月日がきちんと特定できないといけませんから「○年○月吉日」は無効です。 「満○歳の誕生日」は日付が特定できるので有効です。 氏名は、通称やペンネーム、芸名でも本人と特定できれば有効です。 押印は実印でなくとも認印や拇印でも有効です。 又、遺言が数枚にわたる場合でも、そのうちの1枚に押印されていれば有効です。
自筆証書遺言のデメリットとしては、紛失したり、死亡後になかなか発見されない可能性があります。 又、偽造されたり誰かに隠されたりする可能性もあります。 更に、封印されている場合は、すぐに開封することはできません。家庭裁判所へ持って行って検認をしてもらわなければなりません。
公正証書遺言とは、遺言者の思い通りの内容で、公証人が遺言書を作成してくれるという方法です。 公正証書遺言の原本は公証役場に保管され、紛失・変造の心配がありません。
又、遺言の有無を確認することもできますし、法律上安全確実に作成されていますから自筆証書遺言等で必要な検認手続も不要です。 公正証書遺言には、証人2名の立会いが必要です。証人は成年者でなければならず、又、推定相続人(今のままで遺言者が亡くなったら相続人になるはずの人)や受遺者、その配偶者や直系血族などは証人になれません。 作成手順は、遺言者が証人2人と一緒に公証役場に行って、遺言者が公証人に遺言の内容を口述し、公証人がこれを口述筆記します。 次に、公証人が遺言者と証人に対して、筆記した内容を読み聞かせるか閲覧させて、遺言者と証人が正確であると確認すれば署名・押印し、公証人も署名・押印して完成です。 口や耳の不自由な人は、口述や読み聞かせの代わりに、通訳人の通訳でも大丈夫です。
又、遺言者が入院中などで公証役場に行くことができないときは、公証人が病院等に出張してくれますが、日当と交通費が余計にかかります。
公正証書遺言のデメリットとしては、公証人へ支払う費用がかかることと、証人に遺言の内容を知られてしまうことがあります。 証人が司法書士などでしたら、業務上の守秘義務がありますから安全です。 (その他の方式についてはこちらをご覧下さい)
遺言がなくても相続の手続はできます。 相続人全員で遺産分割協議を行って、具体的に誰がどの財産を承継するかを決めます。 又、遺産分割協議も行わないとなると、全ての相続財産について、相続人全員が法定相続分による割合で共有するということになります。 (共有するとどうなるかはこちらをご覧下さい)
逆にいえば、遺言があれば、相続人全員でしなければならない遺産分割協議をしなくてもすみますし、名義変更などの手続きが、相続人の中の誰かひとりででも行えます。 ということは、相続人にとっては、煩雑な相続手続の中で、かなりの負担が軽減される、ということになります。